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作品は「出会い」の中から生まれる。基本的に自分で動くことで小さな「出会い」が発生し「出会い」が「出会い」を呼んでドミノ倒しやダイヤモンドゲームのように広がって行き結果的に作品に定着される。その一連の動きが作る風紋や波紋のようなダイナミズムの中に創造の秘密が隠されているように思える。以前こんなことがあった。場所は大阪の百貨店の贈答用の食器売場。ガラス器やテーブルウエアが明るい照明の中でキラキラ輝く中、僕はその時山梨にあるワイナリーで販売するグッズのデザインイメージを頭に描きながら歩いていた。すでに展開したい世界はあったのだが、それを人に伝えるためにはやはり既成の商品を使って伝えるのが一番速い。僕の想う「こんなワインの世界を作りたい」のサンプルになるものはないかと探していたのであった。
数日後に訪ねたビルはもともと市の港湾局の建物だったということもあり、70年代に建てられたビル特有のモダンでファンシーなデザインがあちらこちらに見られた。どこか世界に向けて広がる海の夢の名残りが感じられた。脇に立つ大きな木も印象的で、各階段の踊り場の広い窓からはこの木の緑がうっそうと見えて心地良かった。最上階からは出船入船の港全体が広々と見渡せてまるで空港の管制塔のような部屋もあり、夏には屋上から花火大会も見物もできるということだった。各階の部屋の多くは国際交流関係のNPO事務所や会議室などに使われるが、一階部分だけを懸案のカフェにしたいということであった。話を聞いて歩きながらこのカフェのイメージを考える以上に、この『NPOビル(仮)』のランドマークとしての意味やこの港町のあり方そのものをまず「大阪港」全体から考える必要があるのではないかと思った。それは「大阪港」全体のイメージ作りということでもあった。 この大阪港には人気のある水族館もあり美術館もあり、本来ならウォーターフロントとしてもっと賑わってよいはずである。ところが意外とそうなっていない。ポイントだけで終ってしまっている。サンフランシスコやボストン、ニューヨーク、ロンドンなど世界の大都市にある港はどこも人気のある観光エリアとなっていて、地下鉄駅を出ただけでワクワクするような港の雰囲気を作り出し一日ゆっくり歩いてみたいような気持ちにさせられる。しかしこの「大阪港」だけは不思議なぐらいいつまでたっても港湾の殺伐さから抜け出せていない。歩いてみたい気持ちにもならない。これはいったいどうしたことだろう。港には港の雰囲気があるのにそれを無視し、無理に一部分をアミューズメントパーク化しただけで終っているからではないかと僕は思う。港にある雰囲気とは「倉庫」であったり「船」そのものであったり、あるいは「船員バー」であったり、それらが作り出す港らしさがあればそれで充分なのだ。しかしその本物の持つ面白さが分っていないのだろう、一部だけをアミューズメントパーク化してしまうのでその明度の軽さに負けて全体が暗く殺伐と見えてしまうのかもしれない。このような時は全体イメージの方法として、まず基調色を整えながら大きく俯瞰的な視点で少しづつ調子を付けていく必要があるのではないか。まず基調色は「赤レンガ色」。歩いてみるとこの『NPOビル(仮)』の裏手にある古い倉庫群の赤レンガが美しい。この「赤レンガ色」を引っぱって全体に伸ばす。「大阪港」の歩道が全てこの「赤レンガ」になり、港の散策路らしい雰囲気が出れば、それでまず「大阪港」としてのキャラクターがはっきりする。そしてその上で幸いにして所々に残っている歴史的な建物をきちんと保存していき、中をレストランやカフェに活用できればそれだけで散策できる観光ポイントがいくつも出来たようなものである。もちろん新しく建てるビルも皆この「赤レンガ色」に統一する。このように町全体がひとつのテーマ(絵)を共有し合いながら協調して作って行くのが歩いてみたい「まちなみ」作りであろうと思う。 さてこのような「大阪港」イメージの中にあって、このNPO拠点施設である当の『NPOビル(仮)』をどう考えるか。僕はこの施設は船に見立てるのが良いと思った。遠くから眺めるとこのビルはどこか港に停泊している大きな船のように見えるのだ。緑に囲まれて船出を待つ船。船は外洋に向って開かれているを表わし、自立性を表わし、みんなで乗り合わせた船「地球号」のイメージであり、海(自然)との調和や未来への夢を表わす。福祉や介護、まちづくりや国際協力といった様々な分野で活躍するNPOは、しかし実体がつかみにくい。そこでそれをあえて形に表すとすれば「船」がふさわしいと思ったのである。「NPOは、出航を待って静かに港に停泊している船のようであってほしい。」これが僕からのメッセージであった。
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