太陽の神 ヘリオス:Helios を描く。

太陽神ヘリオスは、「ギリシャ神話」に出てくる神様。
毎朝、東の王宮から4頭立ての戦車を引き出し天空に躍り出ると、輝く光を発しながら天球を真直ぐ西に駆ける。
そして一日の終る頃、西の涯に達したヘリオスは、今度は巨大な黄金の杯に乗って
大洋の流れに揺れながら再び東の王宮へと戻って行く。
油を流したような暗い海。ひんやりとした冷たい空気。見上げるとそこには満天の星空が広がっている。
そして、朝、再びヘリオスは東の王宮から躍り出る。

神話に描かれる日の動きは、実に颯爽としてロマンチックだ。
先の「7階の役員応接室」には、動物や花や魚を介した光を描きたいと思った。
きらめく光の中を巨大な陰影を映して泳ぎ去る鯨。その同じ波間の上を、アジサシが海面すれすれに滑空する。
しかし、今回の「鳥井信吾副社長の部屋」には、動物や花を介さず「光」そのものを飾りたいと思った。
黄金色に輝く太陽と光。
それが鳥井さんの愛するウイスキーそのものだと僕は思っているからである。

太陽神のイメージは、子供の頃に読んだ本の思い出から引っぱり出した。
たしか記憶の中でも、太陽の神は4頭立ての戦車に乗って天空を走っていた。
西に没した後、黄金の杯に乗って東に戻るというところまでは覚えてなかったが、その間がすなわち「夜」なのだ。
ヘリオスが西の空に輝き、その後から夜の帳がしんしんと迫って来るその頃、
ウイスキーのもっとも美しく輝く時間なのではないかと思う。
ちなみに、今でもヘリオスをもっとも厚く信仰しているのは、エーゲ海に浮かぶ島
「ロドス島」の島民なのだそうだ。

かつてロドスの港の入り口には、太陽の光を表す放射状の冠をかぶった
20mを越すようなヘリオスの巨像が立っていたとのこと。
父クロノスを倒し、最高神となったゼウスはオリンポスの神達に地上の国々をひとつづつ分配したが、
ちょうどその時仕事で不在だったヘリオスのことを忘れていた。
再度分配し直すと謝ったゼウスの提案を断わって、ヘリオスは、これから新しく出現した島だけを
もらうということで和解する。
それが、花に満ちあふれた「ロドス島」だった。

いつの日か、エーゲ海を眺める港に面した「ロドス島」のタベルナに座り、蟹や海老の殻をむしりながら、
持参のウイスキーを片手に、黄金色に輝く夕日に乾杯したいものだと思う。